ミステリーの宝庫/セカンド [日記]

I・アシモフのビッグ・アップル・ミステリー

粒ぞろいの作品群ながら翻訳に難あり!

流石にアシモフ先生編集なので面白い作品が多いのですが、首をひねらざるを得ない日本語があまたあるのに気付きました。どうも翻訳に難があるようです。アシモフ先生自身が著した「黒後家蜘蛛の会」の傑作「よきサマリアびと」が載っていますので冒頭の一節を本書の常盤新平訳と黒後家シリーズ通しての訳者である池央耿の翻訳で比較します。●常盤訳「黒後家蜘蛛の会は、マリオゴンザロが月例の会食のホスト役をつとめるときは、異常事態を覚悟しなければならないことを身に沁みて知っている。彼らはまったく自動的に惨事に対処する心構えをするという境地にまで達していた。彼のゲストが到着したとき、定員がちゃんとそろっていて、ゲストの方もせめて片ことの英語を話せるようなら、青天の霹靂みたいなものだった。」●池訳「<黒後蜘蛛の会>の面々はたび重なる苦い経験から、マリオゴンザロが月例会食のホストに当たったときには何かしら常ならぬことが起こらずには済まないと覚悟していた。いや、それどころではない。彼らは知らず知らずのうちに天変地異に対して身構えるような気持ちにすらなっている。ゴンザロに連れられてやって来たゲストが人並みの頭を持ち、少なくとも片言の英語くらいは話せるということであれば、一同はほっと安堵の胸を撫でおろすほどである。」…原書にもあたりましたが池訳は正確で日本語も練れています。一方常盤訳は「定員がちゃんとそろっていて」と「青天の霹靂」が明らかに誤訳ですし日本語も稚拙です。まるで出来の悪い学生の英文和訳の解答のようです。このような翻訳和文が全編通じて続きますので読む方は隔靴掻痒の感にさいなまれます。面白いアンソロジーなのに残念でなりません。


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